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2003年9月 1日 (月)

VBにおけるセールスとマーケティングの関係

 8月も昨日で最後となりました。それにしても、今年の夏はとんでもなく寒かったですね。8月下旬になって若干暑くなったものの、それまでは雨が多くて肌寒い日が続きました。私自身は暑がりなので、夏の炎天下でスーツを着て外出等を考えると冷夏も結構なのですが、暑くないと問題がある産業の方は大変そうです。先日も某企業にお邪魔したのですが、「今年は冷夏で・・・」と話をされていました。

 ところで当社は2月決算なので、8月31日が上半期の締日になります。まだ速報ベースですが、若干の案件が期ズレを起こしたものの、それなりの売上と利益を確保できそうです。この上期には、Alternax® AGS Adapterの発売、Adobeさんとのアライアンスとセミナーの開催、専門誌や業界アナリストコラムに記事が掲載されたことなどがあり、また少し事業を成長させられたと考えています。

 また、前回オフィス移転の話を書きましたが、10月中旬に移転することが正式に決まりました。新オフィスは近所のため電話番号が変わらないのですが、実は住所もほとんど変わりません。なんと、丁目が同じで番地も3桁の内1桁が1増えるだけですし、ビルの階数も同じでビル名も類似しているんです。これだとオフィスが移転したと気付かない方もいるかもしれませんね(もちろん、関係している方々にはきちんと御挨拶しますが・・・)。とりあえずレイアウトは概ね固まったものの、まだ内装や什器類といった細々としたものは固まっていませんので、なんとか9月中旬までには決めたいと思っています。

 さて、今期も半分が終わり、来期以降の展開について考えることが多くなってきました。一般的に、研究開発型VB(以下、VB)の成長過程はいくつかのステージに分けて考えられます。その分類方法や呼称は人によって若干異なりますが、概ね以下のようになります。

ステージ名
Seed
Startup/Early
Middle

Later

概要
事業の「種」
事業の立上げ
更なる事業成長
株式公開
状況
製品は存在せず、アイデアのみの段階。資本金を使いながら事業開発を行う。初期の製品が完成して販売を開始した段階。まだ収入よりも支出の方が多い。製品がコンスタントに売れる段階。累積CFも黒字化し、CFは事業に再投資される。成長企業として市場に認知される段階。公開企業に必要な企業統治を確立する。
経営目標
製品の完成と発売
単年度CFの黒字化
収益基盤の構築
企業システムの確立
単年度CF
~±0
±0~
累積CF
±0~
 当社の場合は、ちょうど今、上記表の「Startup/Early」から「Middle」へ移行しているところではないかと考えていますが、上記の通り、ミドルステージ以降では製品がコンスタントに売れる必要がありますので、必然的にマーケティングが非常に重要になってきます。そこで今回は、最近考えている「VBのマーケティング」について書いてみたいと思います。

 セールスとマーケティングはしばしば混同されていますが、よく考えてみると明確に違います。その違いをハッキリとさせる為に、まずはセールスから考えてみましょう。セールスとは、「御客様に商品を買っていただくこと。」です。簡単ですね。それではセールスを構成する必要要件は何でしょうか? まず、御客様は要らないものは買いませんので、ニーズは最低限必要です。次に、欲しくてもお金が無ければ買えませんから、予算も必要です。ここまで有って初めて、御客様は「どれを買おうかな~」となるわけで、ここからさらに自分がセールスする商品が選択されるために、認知と比較優位性が必要になってきます。これがセールスの必要要件ではないでしょうか。

セールスの必要要件
ニーズ、予算、認知、比較優位性
 但し、これだけだと、ニーズや予算が完全に確立されてからでないとセールスが出来ないことになり、新規に市場を創造することは出来ません。そこで、これら「セールスの必要要件を創造するという行為=マーケティング」が必要になってきます。つまり、マーケティングという基盤の上にセールスが構築されているという構造で、図に表すとこんな感じでしょうか。
セールス = 売ること = 必要要件の確定
マーケティング = 売り易くすること = 必要要件の創造
 そして、この売り易くする為に企業が御客様(市場)に発信するメッセージが、マーケティングメッセージです。このマーケティングメッセージは非常に広範に渡るものですが、その中でも最も分かりやすいのが、我々が日頃よく見るTVCF等のキャッチコピーでしょう。

 ここで、今度は御客様の側からセールスを考えてみます。御客様にとっては何かしらのモノを買うことになるわけですから、「セールス⇔購買行動」です。現代は成熟社会ですから、全くの新規商品というものはまず存在せず、殆どの商品は何かの代替手段に過ぎません。例えば、通信手段としてインターネット回線を販売する場合には電話やFaxの代替商品になりますし、例え宇宙旅行を販売する場合でも地球旅行の代替商品になってしまいます。だとすれば、一般的に御客様がモノを買う場合には、何かと比較してより優れたモノを買うということが予想できます(実際に私個人の購買行動でもそうしています)。つまり、御客様は「1.これまでのものと比べて、2.ここが優れている(安い、速い、早い、高機能など)」ということを認識して、初めて購買行動を起こすことになります。翻って企業の側から考えると、この認識に合致するようにマーケティングメッセージを発信すれば良いワケです。

 ここまでは実に当たり前のことですね。(だから、「そんなの当たり前だろ!」とか言わないでくださいね(^_^;))。ところがVBの場合には、これが結構難しい。私も以前から、マーケティング理論である「AIDMAの法則」等について、多少は勉強していますし、前職のICVSプロジェクト時代には、「どうやってこれを使ってもらうか?」ということを考える為に、合宿(別名:山篭り)までやったりしていました。しかしながら、(いくら新規事業とは言え)大企業でマーケティングを考えることと、ゼロから製品(≠技術)を考えて実際に事業を起こしていく過程とでは雲泥の差があったのです。

 VBの場合には、そもそも「技術Seedありき」でスタートすることが多いので、実際にどのような分野でニーズがあるのか、またどのようなビジネスモデルが妥当なのかハッキリしないまま起業(Seedステージ)を開始することになります。よって、必然的に(潜在・顕在を問わず)顧客の声を聞きながら技術のブラッシュアップや製品化を進めることになり、その結果上手く必要要件を満たしてセールスに繋がるというプロセスを辿ります。つまり、この段階(Startup/Earlyステージ)では基盤としてのマーケティングは殆ど存在せず、先にセールスがある状態です。また、仮にマーケティングプランがあったとしても、よほど資金に恵まれない限り大企業的には実施できませんし、例え資金が確保できても仮説の段階で投資するのは非常にリスキーです。

 この(マーケティングが無い)状態でセールスを行うのは、プロの営業マンであれ非常に困難ですが、どうにかして初期の御客様を見つけ出し、製品を使ってもらうことでしかブレイク出来ません。これは本当に難しいことで、私も大変苦労しました。当社の場合は運良く御客様と巡り合ってブレイクできましたが、多くのVBが苦労するところだと思います。

 ところが、この状態を上手くブレイクするとすぐに次の壁がやって来ます。それが「セールス・マーケティングのシステム化」です。前述の通り、Middleステージで効率良くセールスを実施するためには、マーケティングは必須のものですが、Startup/EarlyステージのVBはそれまでマーケティングをしてきていません。よってMiddleステージでは、これまでのセールス成功例の中から事業の普遍的な価値を見つけ出し、それをマーケティングメッセージとして昇華させて市場に発信する必要があります。つまり、何らかの形で市場にイノベーションをもたらそうと考えているVBは、先にセールスがあって後からマーケティングが追いかけるという、本来と逆の方向に進まなければならないのです。分かっている人には当たり前のことなのかもしれませんが、私が体験的にこの構造を理解したときは、新鮮な驚きでした。

 これらのことの一部は、かの有名なGeoffrey A. Moore氏の「Chasm」にも書いてありますね。Chasm理論にはMoore氏の商売的な部分が見え隠れしているため、自分として全面的に賛成しているワケではないのですが、この理論と自分の実体験と組合わせることで、より本質的な理解が可能になったのではないかと考えています。このように、最近の当社ではマーケティングやそのシステム化について議論することが非常に多くなってきています。

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