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2006年11月

2006年11月26日 (日)

中国ソフトウェアアウトソーシング事情2

 しばらく間が空いてしまったが、前回の続編を書いてみる。

 前回は、「毎年倍々ゲームで売上が伸びている」とか、「いくらでも人材採用が出来る」とか、日本ではちょっと考えられない状況を書いたが、それでは上海と無錫の求人事情はバラ色かというと、どうやらそうでもないらしい。特に上海で顕著だとのことだが、ベテランエンジニアの定着率が著しく低下しているらしく、業界全体の問題として各企業の経営者を悩ませているそうだ。

 当り前の話だが、事業が高成長している企業に経験を積んだ人材が豊富にいる訳がない。成長が倍々ゲームと仮定すれば、常に全社員の半数が新入社員ということになる。しかも、その殆どが新卒であるから、その部隊を率いるマネージャークラスの人材は常に逼迫し、給与もウナギ登りということだ。先の通り、新卒者の初任給は2000元(≒30000円)程度ということだが、これが経験を積んでくると10000元(≒150000円)とかになり、人材市場的に給与が非常に高騰しているとのこと。

 そこで各社は、他社で経験を積んだエンジニアを積極的に中途採用することになるが、転職元の会社も貴重な社内人材を取られては堪らないということで、中国人の旺盛すぎるほどの上昇志向と相まって、自ずと人件費が高騰することになるらしい。またこれだけであれば、単なる中国企業同士の争奪戦であるが、実はそこに欧米系ソフトウェア企業という黒船が来襲しているのが、事態を複雑にしている。

 通常、日本の企業が第三世界の国に進出する場合、現地採用の従業員に対する給与水準は、日本から出向している日本人社員に比べて低いことが多い。もちろん、日本人社員は幹部待遇で現地採用者と職位が違うということもあるだろうが、殆どの場合で現地採用者が社長で、その下で日本人社員が働いているという構図は見かけられない。

 ところが、欧米系企業の場合はそのような(事実上の)職位制限の様なものはなく、例え現地採用の人材でも、優秀な場合はドンドンと昇進の階段を上って行くらしいのだ。また、幹部社員に関しては本国と給与水準の差はなく、中国企業はもちろんのこと、日本企業で働く場合に比較しても、とんでもなく高水準な給与設定になっている。

 具体的に説明すると、月額3000元(≒45000円)も貰えれば十二分に生活できる上海で、欧米系ソフトウェア企業の管理職に採用された場合には、その20倍程度(60000元≒900000円)は貰えるのだ。上海の物価水準でこれだけ給与が高ければ、完全にエクゼクティブであり、同じく高騰している上海のマンションといえども軽く現金で買えるレベルである。

 これだけ差があると、中国企業や日本企業で働くのがバカバカしくなるのは当然で、正直言って勝負にならない。よって、ハイレベルな人材は皆、「転職スゴロク」の上りである欧米系企業を目指して日夜転職を繰り返すこととなる。

 そうなると当然困るのは日系企業を含む現地のソフトウェア企業で、一生懸命育ててきた優秀かつ経験豊富なエンジニアの定着率が低下し、経験の少ない兵隊エンジニアだけが残るという事態になってしまう。これを根本的に解決するためには、給与を上げていくしかないのだろうが、まだまだ物価水準の低廉な中国国内を市場としているのでは、高給を支払うだけの原資が賄えない。こんなこともあって、どの企業も内外価格差を利用して高い利益を稼ぐオフショア開発に注力している面があるようだ。

 純粋に企業経営の面からだけ見た場合、「最もコストが安い国で生産して、最も物価が高い国で販売する」のは当然のセオリーなので、今後はソフトウェア業界においても、オフショア開発などという限定的なカテゴリーではなく、製造業的な本格的生産シフトが起きるのは避けられないのではないかと思う。

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2006年11月21日 (火)

いつの間にかオーストリアが消滅!

 私の知らない内に、音楽の都ウイーンを擁するオーストリアが消滅してしまったようだ。・・・と書くと誤解を招きそうだが、政府機関自ら改名を申し出ているのであるからしょうがない。

"ÖSTERREICH 日本語表音表記 の変更について 残念ながら、日本ではヨーロッパに位置するオーストリアと南半球のオーストラリアが混同され続けております。 この問題に対し、大使館では過去の文献などを参照し検討を行った結果、Österreichの日本語表音表記を 「オーストリー」 と変更する旨、ご連絡差し上げます。 暫くの間はオーストリアとの併記が行われますが、徐々に「オーストリー」の名前は日本の皆様の間に浸透し、定着していくことと存じます。 皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。 2006年 10月 東京"
AUSTRIANTRADE.ORG: オーストリー大使館商務部

 やはり前代未聞なのだろうか? どうやら当のオーストリー大使館商務部には関係する企業など(想像するに旅行会社?)から問い合わせが殺到しているようで、こんな追加発表までしている。

"ÖSTERREICH 日本語表音表記 の変更について 現在、商務部では皆様からの貴重なご意見を頂戴いたしておりますが、お寄せいただいておりますご質問に対してのご回答は控えさせていただいております。

皆様のご意見に対し深くお礼を申し上げますと共に、ご理解賜りますようお願い申し上げます。  2006年11月

添付のPDFでの案内にもございますように、オーストリーへの表示変更は進めておりますが、まだ変更中の部分もございます。
新しい呼称への大きな理由はオーストリアとの区別化にございますが、「オーストリー」の使用は、義務付けられているものではございません。 
より多くの皆様のご理解を得、ご協力いただくことにより、一日も早い定着を期待いたします。
2006年 11月"

AUSTRIANTRADE.ORG: オーストリー大使館商務部

 そんなわけで波乱含みの船出となったオーストリーだが、このまま上手いこと定着するかどうか暖かく見守っていきたい。

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2006年11月 8日 (水)

中国ソフトウェアアウトソーシング事情1

 先月末に、最近色々とお世話になっているスイングバイ2020社が企画した、上海・無錫アウトソーシング視察ツアーに参加してきた。元々、このツアーをご紹介いただいたのがアライアンス先のOBCさんだったこともあり、現地ではOBCの開発拠点も実際に見せていただいたので、今後の事業展開を考える上で大変参考になり満足している。

 現在、中国のソフトウェアアウトソーシング事業の伸びは目覚ましく、視察で訪れた企業はどこも倍々ゲームで業績を伸ばしている様子であった。また、殆どの会社が2003年くらいの設立にも関わらず、ホンの3年程度で従業員数を500名程度まで増やしており、2008年に3000名規模に拡大する計画と話していたのには驚いた。社員数の伸び率もさることながら、日本ではこれほどの規模で新卒を採用すること自体が不可能である。

 何故それ程の拡大が可能なのかと聞いてみると、実は中国ではソフトウェアエンジニア系の大卒求人が不足気味なのだというから余計に驚く。家庭環境もあって中国事情には詳しい方なので、現在中国の大学卒業者に職が不足していることは良く知っているが、理系の、それもソフトウェアエンジニアまでが求人不足とは思わなかった。

 事情を良くご存じない方のために簡単に説明すると、現在の中国では大学教育の一般化がスゴイ勢いで進んでおり、ここ10年くらいで大卒者は10倍程度に膨れ上がっている。ところが、いくら中国経済が発展しているといっても、それは世界の生産拠点としての発展であり、ホワイトカラーよりもブルーカラーの職の方が圧倒的に多いのが現実である。

 そして、かつて日本においてもそうであったように、中国においても大卒者はプライドが高く、ホワイトカラーの知的職業に従事したがることが多い。かくして需給のギャップが起こり、優秀な教育を受けた学生の多くが期待する職業に就けない、という問題に繋がっている。

 そのような状態なので、当地のソフトウェア企業は相当に絞り込みを行っても余り有るくらいのボリュームで、優秀な新卒者を採用し放題という状況にあるのだという。正直言って羨ましい。

 しかも、その優秀な新卒者であっても、初任給はそれ程高くない。情報工学系の新卒者初任給は、上海で2000元(≒30000円)程度、無錫ではさらに安く1500元(≒22500円)程度だということである。上海と無錫でかなりの差があるのは、生活インフラの価格に格差がある為とのこと。実際、私が知っている範囲でも上海のアパートは結構高い。

 彼らがどのくらい優秀かというと、新卒で半年程度研修を受けると日本語検定の2級程度になり、経験豊富なブリッジSEの元でという条件ではあるが、それなりに日本の開発案件をこなせるようになるのだそうだ。また、中には上海の復旦大学(超優秀!)を20歳(2年飛び級)で卒業してしまうような人材も存在するらしい。

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