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2009年12月 1日 (火)

『スパコン論争』について

民主党政権に変わってから最も目立つ活動の一つが、先日来の事業仕分けであることは論を待たないでしょう。連日テレビで放送され、各種世論調査の結果から、国民の支持も高いようです。何分、初めての事ですから、様々な軋轢が生まれるのは必然でしょうが、ニュースなどで見る限り、まずまずの成果であったのではないでしょうか。

今回、事業仕分けの俎上に上ったのは、国全体の事業の約1/10。そこで削減できたコストが1.5兆円とすれば、全事業に対して行う場合には、10~20兆円程度の削減効果が見込めるかもしれません。各種利権構造を是正して、強い日本を再生するためにも、是非このまま展開して欲しいと思います。

さて、この事業仕分けで少し気になったことがあります。それは投資してもらう側の考え方についてです。事前ヒアリングがあったとはいえ、当日の質疑応答が1時間というのは短いとか、仕分け人が傲岸不遜であるとかいう声がプレゼン側から上がっていましたが、私のように数限りなく投資家への出資交渉を行ってきた人間からすると、予算つける方が偉いのは当たり前です。

また、一般的な企業でも、来年度の担当プロジェクト予算を会社と折衝する場合に、会社側のダメ出しを乗り越えて査定者を納得させるのがプレゼン側の仕事のはずですし、プレゼン側の説得が通じずに予算が取れないことも、予算カットの理由が「会社に金がない」という単純なことも、ごくごく普通にあることです。

そのようなギリギリの折衝現場で、プレゼン側があんな体たらくでは、本来通る予算も通らないのが当たり前でしょう。これまでが甘すぎたのだと思います。そして、その代表的な項目が1230億円にも上るスパコン予算です。
 #スパコンという呼び名は若干古く、現在はHPC(High Performance Computing)と呼ぶようですね

実は当社が今年に入ってHPCシステムズ社と提携したこともあり、ひょんなことからHPCに接する機会が在りました。HPCには汎用プロセッサをクラスタ構成するスカラー型と、専用プロセッサを利用するベクター型の2タイプがあるのですが、現在の主流はx86やx64プロセッサにGPGPU (General Purpose computing on GPU:演算専用のグラフィックスチップ)を搭載したLinuxマシンをクラスタ構成するスカラー型になっており、ベンチマークTOP500の内、ベクター型は1システム(日本の地球シミュレータ)だけです。

ところが、今回の予算申請では、文部科学省はまたもやベクター型(正確にはスカラー型とのハイブリッドですが)を新規開発するという。しかもDCまで新規に建設して、年間ランニングコストが150億円も掛かります。明らかに時代から取り残されているのです。

また、本件が否定されたことに対して、有名大学の学長が連名でクレームしたり、ノーベル化学賞受賞者でもある野依氏が、『歴史の法廷に立つ覚悟あるのか』などと声を大にして反発していますが、ピント外れな指摘と言わざるを得ません。

ノーベル化学賞受賞者で、理化学研究所の野依(のより)良治理事長が25日、自民党本部で開かれた同党文部科学部会に出席し、政府の行政刷新会議の「事業仕分け」作業で、次世代スーパーコンピューターの開発予算が事実上凍結されたことについて、「不用意に事業の廃止、凍結を主張する方には将来、歴史の法廷に立つ覚悟ができているのか問いたい」と痛烈に批判した。

 次世代スーパーコンピューターは、理化学研究所が主体で研究開発している。野依氏は「科学技術振興や教育はコストではなく投資だ。コストと投資を一緒くたに仕分けするのはあまりに見識を欠く。次世代スパコンはいったん凍結すると、瞬く間に各国に追い抜かれ、その影響は計り知れない」と強調した。

 また、「仕分け人」が「トップを取る意味はどれくらいあるか」などと質問したことに野依氏は「中国やアメリカから買えばいいというのは不見識だ。科学技術の頭脳にあたる部分を外国から買えば、その国への隷属を意味する」と述べ、「仕分け人」らの発想に疑念を示した。
ノーベル賞野依氏 「歴史の法廷に立つ覚悟あるのか」 事業仕分けのスパコン予算カットに

査定側が質問しているのは、まさに「投資効果」についてであって、「コストではなく投資だ」と反論するのであれば、その収支計画を示して論破するのが当たり前です。にもかかわらず、記事の後半部分の主張では「技術を外国から買えば隷属を意味する」とか述べてイデオロギー論にすり替えていますし、大体日本自体が技術の輸出国にも関わらず、(貿易相手国が)技術を輸入することを否定するなんて論理破綻もいいとこです。

もしかすると、事業仕分けの最大の効果はコスト削減ではなく、このような時代に取り残された頭の固い人達が、いまだに大学や国立研究機関のトップに君臨し続けており、この国の発展を阻害しているという事実が炙り出されたことかもしれません。上記の皆様には、可及的速やかに退出いただきたい。

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