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2010年1月18日 (月)

小沢献金問題とは何か? その1

民主党小沢幹事長も、「まさか1年間に2回も強制捜査が入り、あまつさえ現職国会議員が逮捕されるとは・・・」と思ったかどうかは分かりませんが、それにしても予算審議の大事な場面で、またもやこの手の話かと思うとガックリ来ます。

メディアや某掲示板では「小沢ヤメロ」の大合唱のようですが、昨年の事件の際にも感じた通り、個人的にはやはり今回も「???」という思いを禁じ得ません。いや、捜査関係者による情報リーク云々ではないのです。そもそも、この小沢事件(とこの場では表現しますが)って、いったい何が問題なのでしょうか?

実は個人的に、昨年の大久保秘書逮捕の時に話題の政治資金規正法について調べてみたところ、大変興味深いことが分かりました。

<政治資金”規制法”ではない>
私も調べるまで少し誤解していましたが、政治資金規制法ではなく規正法なんですね。つまり、献金などの政治的な資金を規制する法律ではありません。政治資金規正法の最初の条文にはこう記載されています。

第1条 この法律は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の接受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。
(下線は筆者付与)
詳細はネットで調べていただければ分かりますが、乱暴に要約すると「政治資金の収支は公開情報として規則に則って改よ」という趣旨だと読み取れます。逆に言うと、
  • 企業から政治献金を受けては行けない
  • 1年間の政治資金の上限は○○万円である
  • 1回の政治献金は上限○○万円である

などという規制を掛ける法律ではないということに注意が必要です。

そしてのこの法律に違反した場合の罰則規定については、内容によって幾つかあるのですが、政治資金の虚偽記載という事由の場合は下記の24条でしょう。

第24条 次の各号の一に該当する者(会社、政治団体その他の団体(以下この章において「団体」という。)にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する
1.第9条の規定に違反して会計帳簿を備えず、又は同条、第18条第3項若しくは第19条の4の規定に違反して第9条第1項の会計帳簿に記載すべき事項の記載をせず、若しくはこれに虚偽の記入をした者
2.第10条の規定に違反して明細書の提出をせず、又はこれに記載すべき事項の記載をせず、若しくはこれに虚偽の記入をした者
3.第11条の規定に違反して領収書等を徴せず、若しくはこれを送付せず、又はこれに虚偽の記入をした者
4.第16条第1項(第19条の11第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定に違反して会計帳簿、明細書、領収書等、領収書等を徴し難かつた支出の明細書等又は振込明細書を保存しない者
5.第16条第1項(第19条の11第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により保存すべき会計帳簿、明細書、領収書等、領収書等を徴し難かつた支出の明細書等又は振込明細書に虚偽の記入をした者
6.第15条の規定による引継ぎをしない者
7.第31条の規定により求められた説明を拒み、若しくは虚偽の説明をし、又は同条の規定による命令に違反して同条の報告書等の訂正を拒み、若しくはこれらに虚偽の訂正をした者
(下線は筆者付与)

日本の刑法では、重いものから、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料と規定されている(刑法9条)ようですので、政治資金規正法違反事案は、「軽犯罪とは言い難いものの重犯罪というワケでも無さそう」です。

<大久保秘書の記載処理は違法か?>
昨年逮捕されて今回再逮捕された公設第1秘書の大久保氏ですが、彼が逮捕されたのも政治資金規正法違反容疑です。

あの事案は、

    1. 民主党の小沢代表(当時)の政治資金管理団体「陸山会」が、西松建設OBが代表を務める政治団体「新政治問題研究会」、「未来産業研究会」から政治献金を受け取った。
    2. 当時の「陸山会」の会計責任者であった大久保氏が両団体からの献金を政治資金として報告した。
    3. 大久保氏は検察から、「両団体は西松建設のダミーであり、政治資金規正法に違反して虚偽の記載を行った」という嫌疑を掛けられ逮捕された。
    4. メディアによる報道では、「大久保氏が西松建設側と直接献金額等について調整するなど主導した」とされている。

ということでした。

ここで非常に重要なポイントは、政治家個人の政治団体に対する企業献金は禁止されているが、企業献金が可能な政党支部は事実上政治家が個別自由に設立でき、政党支部から政治家個人の政治団体に対する再献金は可能であるということでしょう。つまり、小沢氏の政治団体が実質的に西松建設から献金を受ける方法は存在するのです。

また、嫌疑の構成要件からすると両団体が西松建設のダミーかどうかが非常に重要となってきますが、一部報道によれば両団体は住所こそ同じものの、西松建設とは別の場所に事務所を設けており、常勤従業員が3名存在したとされています。

仮にこの条件下で両団体がダミーだとするならば、(ダミーではない)政治団体の構成要件を法律で規定するなどしなければ、到底公正とは言えません。何故ならば、「その団体はダミーだ」と検察が考えれば、いつでも挙げられる事になるからです。

話を要約すると、

    1. 企業⇒政党支部⇒政治家主催政治団体
    2. 企業⇒企業主催政治団体⇒政治家主催政治団体

のどちらも合法であるにも関わらず、上記のどちらで処理すべきかは法律で明確に規定されていないというのが問題の本質です。実際、もし大久保氏が両団体からの献金を断って西松建設本体から政党支部への献金に切り替えるように直接指示していたとすれば、それこそが政治資金規正法違反に該当します。

本来、法務省は本件に着手する前に政治資金規正法を改正すべきだったと思います。そうして適法処理のガイドラインを明確化した上で立件すれば、これほど大きな問題にはならなかったでしょう。割合はともかくとして、世の中の少なくない人が検察ファッショを懸念するのも、こういったグレーゾーンを政治的に利用されているという疑問があるからであり、先に法案提出された取調可視化法等と合わせて、警察・検察・司法のオープン化を進める必要があると強く感じます。

尚、私は本件に対して検察の行き過ぎを懸念するスタンスですが、政治家としての小沢幹事長に対しては、決してクリーンなイメージを持っていません。しかしながら、我が国が法治国家を標榜するのであれば、犯罪を構成するかどうかということは明文化された法律に則って処理すべき事柄であり、法的なグレーゾーンを作った上で当局が恣意的に運用するという人知主義的な現状は、速やかに変えるべきであると考えています。

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