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2010年12月 2日 (木)

リン争奪戦の解決策は植物工場しかない

現代農業に欠かせない化学肥料の輸出制限を、中国が突然始めた模様。

 中国は1日、リン酸アンモニウムなど化学肥料の輸出関税を31日まで110%に引き上げると発表した。ここ数年、国内の肥料の需要期に高関税を課したことはあったが、突然の表明。実質的に輸出が止まることになりそうで、大手商社で肥料を扱う部署の幹部は「レアアースと状況が似てきた。中国は長期的には国内分を確保するつもりだろう」と漏らした。

 実は「中国が来年から年を通じて輸出関税を30~40%にするのでは」といううわさが業界を駆けめぐっていた。リン鉱石を原料とするリン酸アンモニウムの場合、直近の税率は数%で、業界は輸出規制の強化に身構えていた。
肥料争奪戦、レアアース並み 中国、リン輸出を突然制限

当面は12月末までの期間限定ですが、輸出関税が数%から110%へ引き上げということは、輸入側からすれば価格が倍以上になることを意味しますので、事実上の輸出禁止措置に近いと思われます。この構図は先日のレアアース禁輸措置と良く似ており、今後日本をはじめとした肥料を輸入に頼っている国々が一斉に反発し、またぞろ国際社会で中国非難が盛り上がることでしょう。

しかしながら、レアアースを含む中国の資源保護主義政策について反射的にバッシングすることは、あまり良い方法だと思えません。記事中にもありますが、リン鉱石の輸出については米国やカナダも停止しつつありますし、世界的に資源争奪戦となっているため価格が急騰しているからです。また、この局面で中国側(というか資源輸出国)からしてみれば、今後の資源枯渇を想定して在庫を持っておきたいというのは自然な考えですし、いくら自由貿易といっても内政干渉レベルの強要は出来ません。

それでは日本はこの問題にどのように対処すべきか。その答えは最近注目を浴びている「植物工場」のような農業の工業化ではないかと思います。

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そもそも国土が狭く平野が少ない我が国では、どうやっても世界と伍していくだけの大規模農業は実現できません。「零細農家を統合して農業法人による大規模農業化を行えば勝てる」などという言説が度々メディアにも掲載されますが、それは大陸国の大規模農家を良く知らないだけではないかと思います。

米国の大規模農家では数万エーカー規模の所もあり、仮に1万エーカーとしても実に4000ha(7km四方弱)と、日本からすると想像を絶する広さの農地で生産をしています。その上で農薬散布を飛行機で行ったり、小規模なビルほどもあるコンバインで大量に収穫作業を行うなどの機械化によって、高い生産性を誇っています。果たして日本国内で同じことが可能か、またもし可能だとしてその農場をいくつ作れるかと考えてみれば、規模では勝負にならないのが自明です。

実は日本の御家芸である工業においても、以前は「大規模な米国の工業には勝てない」と言われ、同じような状況にありました。しかしながら、日本の工業は規模の弱点を見事に克服し、現在でも世界に誇る高い生産性を維持しています。そのノウハウを農業に展開しましょう。

もちろん、「農業の工業化」といっても口で言うほど簡単ではないでしょう。現に下記のような安直な議論に警鐘を鳴らしている記事もあります。

 以上述べてきたように、植物工場が効率的だ、植物工場を見習え、という昨今のテレビのコメンテーターの発言は、眉に唾をつけて聞いた方がよいでしょう。また、「農業を工業化し、生産効率を上げるべきだ」という似たような主張がありますが、これは植物工場と同様、3つの問題を克服しなければなりません。上記の問答で使った番号でいえば、
3)植物の生育スピードは最速でも20日間
4)植物は「動かせない」
5)農産物は安くないと売れない
の3つです。特に3)、4)の問題は「工業化」と真っ向から矛盾します(A8、A9参照)。製造速度を20日間より短縮することができず、製造物(野菜)を何十日も同じ場所から動かすことができず、機械や人間の方が世話するために動いてやらなければならないというのは、「工業化」の概念と対立してしまう問題です。
「植物工場」は本当に効率的か 一問一答で考える農業の未来

しかし、昔からFA(Factory Automation)は日本の得意とするところです。かなり以前のエントリで、「液晶とプラズマの戦いは継続的なカイゼンによって液晶が勝つ」と予測したことがありましたが、植物工場はきっと同じような技術革新によって、徐々にメインストリームになると思います。

 植物工場とは、この研究に長年携わる東京農業大学の高辻正基客員教授によると、「野菜や苗を中心とした作物を施設内で光、温湿度、CO2、培養液などの環境条件を人工的に制御し、季節に関係なく自動的に連続生産するシステム」と定義されている。植物工場には、後述する「太陽光利用型」と「完全制御型」があるが、低農薬または無農薬の高品質作物を、天候に左右されることなく、狭い土地利用で大量生産できることに特徴がある。

 その一般的な構成は、おもに各種センサ、コントローラ、(簡易なアクチュエータを含む)栽培装置、栽培ノウハウ(栽培ソフト)、各種光源などから成る。見方によっては、センサ、コントローラ、アクチュエータのロボットの3要素を空間内に分散配置した“空間ロボット”と見ることができ、農業ロボットの分類に加えられることもある。
農業ロボット企画 第2弾 拡大する“空間ロボット”「植物工場」とRTの融合を予測する!

このような技術を国家的に支援し、日本の農業を今一度確立した上で初めて、TPPのような冒険的な政策を進めることが出来ると思います。結果的には現在の農家を困窮させることになるかもしれませんが、国としては一歩前に進みますし、現状で日本の選択肢はそれ程多くありません。今こそ政府の勇気ある決断を期待します。

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